cotan booksのブログ

「インターネットとうまくつきあう」をコンセプトにした本屋のブログです

"本は仮説だ"

 タイトルの文言は、日本図書館協会が出版するJLA図書館実践シリーズの「<本の世界の>見せ方 明定流コレクション形成論(著:明定義人)」から抜粋した。今読み進めている本だ。

本書は主に図書館職員向けで、職員が利用者に対してどのような心構えを持って貸出・選書といった図書館運営の要となる業務を行なっていくべきか、みたいなことが書かれている。

"本は仮説だ"は、第7章の「本を選ぶ」に見出しとしてボールドにされている。ここに書かれていることを、かいつまんで記していく。

筆者曰く、読み手は往々にして自分の考えを肯定してくれる本を読みたがるという。ただ、自分にとって都合の悪い本を読まないということは、自分の中に固着された"正しい"考え方を安直に自己肯定することの助長となり、結果的に読者の"認識を歪ませる"ことにつながる。このあたりはYou are What You Eat的でイメージが湧きやすい。

そして認識の歪みを防ぐために、そもそも本は仮説であるという立脚点に立って考えるということが重要と書いている。選ばれた本が結果的に正しい≒認識の歪みを防いでくれるのかそうでないのかは、都度予想・仮説を立てて世の中に問うてみないとわからないものであって、図書館は正解を並べるところでも、知識体系を啓蒙する場所でもない。図書館や職員が思う正しい・良い本のみを並べず、利用者が読みたい本に応え、他の本をさらに読みたくなるように欲望を喚起できるように努めるべきだと。

とある本を図書館に在架するという意思決定が行われたときに、なぜこの本を選ばれるべきのか/なぜ類書ではダメなのかといった選書の目的を明確にしたうえでその目的を仮説と置き換え、並べた本へのリアクション(貸出があったかなど)を見て仮説検証を行い、より良い選書と棚づくりに向かっていくことが大事であると言いたいのだと私は解釈した。実はまだ最後まで読んでいないが。

私はベンチャーのwebマーケティングに携わっていることもあり、この仮説検証サイクルには腹落ちする。これを素早くできない企業は早晩潰れて行くというのが定説だ。もちろん、本屋は商材や売り場が物質的な環境にあることがほとんどであるため、そのサイクルのスピードはwebのようには行かないだろうし、webのようにできたとしても完璧になることはない。(人はそれほど単純ではない、というのが私の中の前提だ。)

ビジネス的に考えたら当然のような話かもしれないが、図書館という公共性が問われるサービス内でも仮説実験思考に基づき科学的に選書・棚づくりをしていくべき、と主張されているのが興味深かった。そしてあらためて、この清濁併せたバランスの取れた選書というのは、私の性格上イデオロギーが前に出過ぎる時があるので難しいポイントだなと実感した。自重、とはいってもこれも徐々に矯正していくしかないとも思う。

また、この本の序盤にある図書館による本の選択方針・選択基準、提供方針・提供基準についての記述は、新しく本屋を開くにあたってどんなお店にするかを考えるときに非常に参考になるガイドだと思った。猿真似だがcotan booksバージョンを作ってみたので、今後アレンジを加えていこうと思う。

 

今日は終日お休みの日。長雨が続いた午前中はゆっくり過ごし、晴れになる昼ごろに家事や読書などの活動を始めた。午後は軽い事務相談を兼ねて想雲堂さんにお邪魔してコーヒーをいただいた。

それから最近読み込んでおく必要のある本が出てきたため、図書館や書店で本探しをした。昨年秋にちょっとした執筆のお仕事があり、それ以来の課題図書だ。

課題図書となったのは、岡茂雄の著書3冊と、テッド・チャンの「息吹」だ。岡茂雄の本は、「本屋風情」は既に持っており、「新編 炉辺山話」は図書館で予約した。しかし「閑居漫筆」はネットで探しても在庫切れが多く見当たらない。

後者は未来屋書店でドドンと面陳されていたのを見つけて購入。ついでにGAFA特集がある日経ビジネスの最新号も探したけれど、置いていないようだったので諦めた。

年始にジョコビッチの本を読んでから、彼の食事スタイルを参考にしていて、我が家には自炊ブームが来ている。自炊のモチベーションを上げるために、スーパーに寄ってから帰宅した。

松本市の猫は谷根千の猫より動かない

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本日は終日業務委託のお仕事があり、雪と雨が降り注ぐ中自宅で黙々作業。年初め、ウォームアップが、済めばよい、人間だもの、という先人のありがたいお言葉を胸に粛々対応。そんな先人が欲しかった。サブスクで。

ところで松本の猫は妙に人なつっこい、というか動じない。

写真は市内のとある猫スポットで撮影したもの。映っている3名が同じ方向を見つめているのがよろしい。近所のセブンイレブンにたむろしていた猫たちも、あざらしのように身を丸めて観音スマイルでどこかを見つめていた。

日頃しょっちゅう猫に出くわすが、てこでも動かない姿勢(アティテュード)が見て取れ、ドラマ版漂流教室の未来人を彷彿とさせるずっしり感と、風になびく毛並みから微弱な横揺れがある。しかし彼らは動かない。

思い返せば東京でも猫を幾度となく見てきたが、よく逃げ出されたものだった。谷根千の猫たちも寺の周辺に設けられた高い塀や、いわゆるあの「あたり」などから観光客をじっとりと見つめていた。しかし、少しでも距離を詰めれば私の存在なんてなかったようにそっぽを向きしゅるりと消えていく。

しゅるりと逃げるのが猫である、という固定観念は松本ではあまり通用しないのだなと思った。

ー 動きすぎてはいけない ー 

未来人からそんなメッセージを受け取っている気がする。

 

昨日は夏目漱石の「私の個人主義」の冒頭にある言い訳演説だけを読んで床についた。それが影響してか、2つ目のエントリから全く開業準備とはかけ離れたものになっていた。猫を出せばPVが取れる、というネットの常識に抗えるほどの毒にも薬にもならないお話になってしまい、書くことに苦味を覚える次第である。

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はじめまして

cotan books(コタンブックス)店主です。

去年、東京から長野県は松本市に移り住んできました。今は業務委託として働きつつ、本屋の開業準備に向けて日々邁進している身です。

今は目録を作ったり、サイトを作っていたりします。しかし、肝心の店舗物件が決まっていません。これが一番難関です。聞いた話では2年もかかった人もいたとか! こればかりはご縁と思って地道に探しています。

そのためまずはECストアを今年の春までにオープンさせ、その後、松本市内に店舗を構える予定です。追々は店舗内でもイベントをいくつかできればと思っています。並行して細々と古本市などの出店活動も行います。

 

引っ越しから半年が経ちますが、松本の冬は寒いです。気温は最高5度ぐらい、最低ではマイナス5度にも届きます。
東京では一度も使ったことがなかった石油ストーブを購入したものの、灯油を消費しすぎないようセラミックヒーターと登山の厚手ウェアを駆使して凌いでいます。冬対策にかかる暖房・服飾費用が引っ越し以降もっとも大きい投資だった気がします。

朝にはスリラー映画ばりの濃い霧が町中を覆うことがあります。霧が晴れた頃に近所にある薄川(ススキ川と読む)を走ると、「里山ってまさにこのことか〜」と感嘆としてしまう美ヶ原の朗らかとした低い山々、そして向かい合うように裾を大きく広げて鎮座している黒と白が混じった壁、もとい冠雪した北アルプスを見下ろすことができ、CGでしか見れないと思っていた絶景を拝むことができます。都会にはないだだっ広い世界を一望できると、時間が止まったように穏やかな感情が訪れ、引っ越してきて本当によかったと感じる日々です。

 

どんなお店にするか

cotan booksは「インターネットとうまくつきあう」ことをコンセプトにした本屋です。

もう少し詳しい説明については、こちらのリンクをご覧ください。

cotanbooks.hatenadiary.jp

大雑把にまとめると、本を通してインターネットのメリット・デメリットを提示しつつ、日頃の付き合い方を顧みて、個々人にとっての枯淡の価値というものを見出すお手伝いをしよう、というものです。

しっくりくる言葉として、デジタル・ウェルビーイングというものがありますが、この範疇にとどまらない本やサービスを提供していきます。副次的に、現代社会に広く普及しほぼインフラ化したインターネット(そしてそれ以外の世界)について学べる・話せる、よろず相談所として機能すれば嬉しいとも思います。

と、ここまで読んでも腹落ちしてない方が多いかと思います。本当は本エントリに「なぜ古本屋なのか?なぜインターネットなのか?」を詳細に書いていくつもりでしたが、自分があまりに遅筆なためその説明は別稿に任せます。

 

何を書いていくか

このブログでは、今のところ不定期更新のつもりですが、開業準備の記録として日記がメインコンテンツになります。本や音楽・映画についてのコラムもたまに。

あまり計画的ではないのは事実ですが、その時々のライブ感を大事にするということでいったんは煙に巻こうと思います。

もちろん読んでくれる方にとって役に立つ情報も届けられたら、とは思いますが、あくまで日記の体裁を取っていくので生活臭が漂う内容になっていくことはご容赦ください。(今更テニスプレイヤーのジョコヴィッチの本を読んで、グルテンを減らした食生活に興味が湧いてます)

cotan booksでは今のところ、twitterinstagramのアカウントは持っていますが、ほぼ稼働していない状況なのでこれからアクティブにしていこうと思います。まずはタイムラインを日々覗くところから。いいねをつけたり、リプ・DMを飛ばしたり徐々に生命力・ネット人間らしさを身につけていくつもりです。

幸運なことに、松本で知り合った人々は掛け値抜きで親切な方ばかりです。もちろん人との関わり方が会社員の時とは違うので、予期しなかったイベントが多くなっていることは事実です。つまり書くネタはきっと切れないはず......がんばるぞ。

長くなりましたが、それではみなさま、本年もよろしくお願いいたします。