cotan booksのブログ

「インターネットとうまくつきあう」をコンセプトにした本屋のブログです

音楽と料理の捻れ

女鳥羽川の三九郎は結局見逃してしまった。

少しばかり「あめ市」の様子を見ようと街に繰り出したが、ちょっとばかり時間に遅れた上、離れた場所に別の用事があり機会を失うことになった。私の三九郎Yearは終わってしまった。

 

その日の夜、「井戸の底」という自宅を改装したライブハウスに向かった。

弾き語りメインだが、演者が個性豊かで濃淡楽しめる。地元界隈のミュージシャン達とゆるめの距離感と演奏を分かち合う。まるで暗い部屋で友達みんなでテレビ映画を観ているようだった。生演奏が良い刺激になったので、次の日は自宅の楽器でぽろぽろと遊んだりした。

ライブ後にご飯タイムがあり、それもとても良かった。ブリ大根も染みててジューシーだったが、ポテサラがひときわ美味しかった。ポテサラが美味しいことはそうそう無い。ちなみに日本ポテトサラダ協会によるとポテトサラダはロシア起源説が有力らしいが、1年ぶりぐらいに食べた気がする。酸味や塩胡椒の効き具合、具の大きさなど、色々ひっくるめて完璧なバランスだった。一口食べてそう表現するしかないように感じた。聞くとやはり試行錯誤を重ね、コツを抑えたらしい。なおさらお通しとして毎回出してほしい。

 

そして今日(15日)は行こうとしたお店が定休日だったことに気づき、方針転換をしてとある古本屋さんへ向かった。

そこで音楽と料理に関する面白い雑誌を見つけた。古雑誌の割に高価だったと思ったが、ツッコミどころがあり過ぎる素晴らしい企画構成で、状態も良く、他の人に買われる前に手に入れたいという気持ちが勝り、買った。キャッシュで買った。完全キャッシュレスの時代になると「大枚を叩く」という言葉もいずれ消えるのだろうか。札束で頰を殴ることもなく、分子科学がさらに強くしてくれたガラス付きスマホで殴るのか。

 

さて、開業準備に関してはこれから一箱古本市の打ち合わせ、古本市の見学、納車日、物件関連とイベントが続く。といっても感触としては進んでいるような、いないような......実感が薄いからこそ、地道に目の前のことを片付けなくてはならない。あと、細切れの時間を使って引き続き確定申告を片付けている。

グルテンフリーな自炊はまだ続いていて、以前よりぐったりと疲れることが減った。自分に体に合うのかどうか、まだ確証が持てないのでもうちょっと続けてみようと思う。

古物商・個人事業主の雑務、あるいは三九郎

今日は朝から古物商がお店に設置しなくてはならない書籍商プレートの注文、サイトに載せる古物営業法に基づく表示の設定をした。

書籍商のプレートは警察署でも注文できるらしいが、amazonでも2,000円くらいで買えたりする。氏名、公安委員会の名前(長野で申請したら、長野県公安委員会となる)、許可証の番号を業者に伝えれば作成可能だ。

amazonの場合は、カートに入れた後、ギフト設定にチェックを入れるとメッセージが記入できるので、そこに上記3つの情報を記載しておけば良い。

注文とサイト設定が終わった後、住所付きのハンコを作ってなかったので、ハンコサイトを色々見て回っていた。ちょっとデザイン凝りたいなあと思い、イラストレータで作ることにした。が、案を考えるところで止まってしまった。

そして確定申告の準備。早めに進めないと積んでしまう恐怖感から進めていたが、まだ3割ほどしか完了していないだろう。

 

午後は松本市では有名な「三九郎」を見に行こうと思い、散歩に出かけた。

どんな祭りなのかは他の方のブログ記事に詳しいので、そちらを参照されたし。

www.i-turn.jp

matsumotogurashi.naganoblog.jp

 

そして近所の薄川でもいくつか行われているのを発見し、写真を少しばかり撮った。

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由来や意義についてあまり詳しくないため、深くコメントはできないが、川辺で煙をモクモクと上げ、静かに燃え盛るだるま達を目にすると妙な高揚感を覚えることは確かだ......

また、明日も街中を流れる川「女鳥羽川」で行われているそうなので、引き続き三九郎と向き合いウォッチしていきたい。

許可証を受け取りに

朝から警察署に行ってきた。

12月に申請した際は昼過ぎだったため結構混んでおり、窓口も普段の倍にあたる2人体制にしていた。今日は一番のりだったのか、待ち時間もなく担当の方と話すことができた。

古物商許可証の受け取り、誓約書の書き直し(申請後に形式の刷新があり、再度記入が必要だったらしい)、主たる営業所の届け出用紙の記入(これも今年の春にある法改正のため必要になった)、古物営業法に基づく表示に関する説明などがあり、30分くらいは滞在したと思う。

担当者曰く、古物商関連の申請・変更届などは基本的に窓口のみで受け付けており、今後もオンライン申し込みに対応できるかはまだ見えていないとのこと。行政の電子化はやはり重たそうだ。プライベートでも仕事でもネット漬け気味だった自分にとっては、郵送や役所への訪問を伴う許可証申請のための書類集めのおかげでようやくアナログによるスピード感や煩雑さに慣れることができたと思う。

ちなみに今後新たに店舗を持った時に、あらためて主たる営業所の変更届け出を出す必要があるのだが、結局警察署に訪問しなくてはならないのは正直微妙だ。足繁く通うことに慣れておかなくては。近くにツルヤがあることがなんとかモチベーションに繋がる。

昼以降は別仕事の急対応があり、ほぼそれで埋まってしまった。なんとか自炊だけは止めなかったが、リズムや精神衛生に乱れが生じたと思う。

明日は松本が盛り上がる三九郎・あめいちの日。松本ぼんぼんを初めて見た頃から、松本のお祭りはちょっとした捻り・狂気・茶目っ気が同居した不思議さがあると感じていた。街中をじっくり見ておきたいので、今日はしっかり寝ておこう。

古物商許可が下りた!

お昼頃、長野県での古物商許可がおりたと警察署より連絡があった。審査落ちは滅多にないが、もしものことがあったら…と心配していたので、よかったよかった。

ようやく長野県の古本屋として名乗れます。

古物商の番号がついたプレートと、帳簿付けがマストになるのですぐに準備して、ECの準備ができてなさ過ぎるので、急いで目録まとめと撮影せねば…

そして古物商組合。去年中に見学行くつもりが行けずじまいだったので、近々おうかがいしてみないと。

今日は業務委託デーなのでお家で缶詰め。腰に痛みを感じ始めてるので良い椅子に替えたいこの頃。

 

"本は仮説だ"

 タイトルの文言は、日本図書館協会が出版するJLA図書館実践シリーズの「<本の世界の>見せ方 明定流コレクション形成論(著:明定義人)」から抜粋した。今読み進めている本だ。

本書は主に図書館職員向けで、職員が利用者に対してどのような心構えを持って貸出・選書といった図書館運営の要となる業務を行なっていくべきか、みたいなことが書かれている。

"本は仮説だ"は、第7章の「本を選ぶ」に見出しとしてボールドにされている。ここに書かれていることを、かいつまんで記していく。

筆者曰く、読み手は往々にして自分の考えを肯定してくれる本を読みたがるという。ただ、自分にとって都合の悪い本を読まないということは、自分の中に固着された"正しい"考え方を安直に自己肯定することの助長となり、結果的に読者の"認識を歪ませる"ことにつながる。このあたりはYou are What You Eat的でイメージが湧きやすい。

そして認識の歪みを防ぐために、そもそも本は仮説であるという立脚点に立って考えるということが重要と書いている。選ばれた本が結果的に正しい≒認識の歪みを防いでくれるのかそうでないのかは、都度予想・仮説を立てて世の中に問うてみないとわからないものであって、図書館は正解を並べるところでも、知識体系を啓蒙する場所でもない。図書館や職員が思う正しい・良い本のみを並べず、利用者が読みたい本に応え、他の本をさらに読みたくなるように欲望を喚起できるように努めるべきだと。

とある本を図書館に在架するという意思決定が行われたときに、なぜこの本を選ばれるべきのか/なぜ類書ではダメなのかといった選書の目的を明確にしたうえでその目的を仮説と置き換え、並べた本へのリアクション(貸出があったかなど)を見て仮説検証を行い、より良い選書と棚づくりに向かっていくことが大事であると言いたいのだと私は解釈した。実はまだ最後まで読んでいないが。

私はベンチャーのwebマーケティングに携わっていることもあり、この仮説検証サイクルには腹落ちする。これを素早くできない企業は早晩潰れて行くというのが定説だ。もちろん、本屋は商材や売り場が物質的な環境にあることがほとんどであるため、そのサイクルのスピードはwebのようには行かないだろうし、webのようにできたとしても完璧になることはない。(人はそれほど単純ではない、というのが私の中の前提だ。)

ビジネス的に考えたら当然のような話かもしれないが、図書館という公共性が問われるサービス内でも仮説実験思考に基づき科学的に選書・棚づくりをしていくべき、と主張されているのが興味深かった。そしてあらためて、この清濁併せたバランスの取れた選書というのは、私の性格上イデオロギーが前に出過ぎる時があるので難しいポイントだなと実感した。自重、とはいってもこれも徐々に矯正していくしかないとも思う。

また、この本の序盤にある図書館による本の選択方針・選択基準、提供方針・提供基準についての記述は、新しく本屋を開くにあたってどんなお店にするかを考えるときに非常に参考になるガイドだと思った。猿真似だがcotan booksバージョンを作ってみたので、今後アレンジを加えていこうと思う。

 

今日は終日お休みの日。長雨が続いた午前中はゆっくり過ごし、晴れになる昼ごろに家事や読書などの活動を始めた。午後は軽い事務相談を兼ねて想雲堂さんにお邪魔してコーヒーをいただいた。

それから最近読み込んでおく必要のある本が出てきたため、図書館や書店で本探しをした。昨年秋にちょっとした執筆のお仕事があり、それ以来の課題図書だ。

課題図書となったのは、岡茂雄の著書3冊と、テッド・チャンの「息吹」だ。岡茂雄の本は、「本屋風情」は既に持っており、「新編 炉辺山話」は図書館で予約した。しかし「閑居漫筆」はネットで探しても在庫切れが多く見当たらない。

後者は未来屋書店でドドンと面陳されていたのを見つけて購入。ついでにGAFA特集がある日経ビジネスの最新号も探したけれど、置いていないようだったので諦めた。

年始にジョコビッチの本を読んでから、彼の食事スタイルを参考にしていて、我が家には自炊ブームが来ている。自炊のモチベーションを上げるために、スーパーに寄ってから帰宅した。

松本市の猫は谷根千の猫より動かない

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本日は終日業務委託のお仕事があり、雪と雨が降り注ぐ中自宅で黙々作業。年初め、ウォームアップが、済めばよい、人間だもの、という先人のありがたいお言葉を胸に粛々対応。そんな先人が欲しかった。サブスクで。

ところで松本の猫は妙に人なつっこい、というか動じない。

写真は市内のとある猫スポットで撮影したもの。映っている3名が同じ方向を見つめているのがよろしい。近所のセブンイレブンにたむろしていた猫たちも、あざらしのように身を丸めて観音スマイルでどこかを見つめていた。

日頃しょっちゅう猫に出くわすが、てこでも動かない姿勢(アティテュード)が見て取れ、ドラマ版漂流教室の未来人を彷彿とさせるずっしり感と、風になびく毛並みから微弱な横揺れがある。しかし彼らは動かない。

思い返せば東京でも猫を幾度となく見てきたが、よく逃げ出されたものだった。谷根千の猫たちも寺の周辺に設けられた高い塀や、いわゆるあの「あたり」などから観光客をじっとりと見つめていた。しかし、少しでも距離を詰めれば私の存在なんてなかったようにそっぽを向きしゅるりと消えていく。

しゅるりと逃げるのが猫である、という固定観念は松本ではあまり通用しないのだなと思った。

ー 動きすぎてはいけない ー 

未来人からそんなメッセージを受け取っている気がする。

 

昨日は夏目漱石の「私の個人主義」の冒頭にある言い訳演説だけを読んで床についた。それが影響してか、2つ目のエントリから全く開業準備とはかけ離れたものになっていた。猫を出せばPVが取れる、というネットの常識に抗えるほどの毒にも薬にもならないお話になってしまい、書くことに苦味を覚える次第である。

cotan booksのブログを始めます

はじめまして

cotan books(コタンブックス)店主です。

去年、東京から長野県は松本市に移り住んできました。今は業務委託として働きつつ、本屋の開業準備に向けて日々邁進している身です。

今は目録を作ったり、サイトを作っていたりします。しかし、肝心の店舗物件が決まっていません。これが一番難関です。聞いた話では2年もかかった人もいたとか! こればかりはご縁と思って地道に探しています。

そのためまずはECストアを今年の春までにオープンさせ、その後、松本市内に店舗を構える予定です。追々は店舗内でもイベントをいくつかできればと思っています。並行して細々と古本市などの出店活動も行います。

 

引っ越しから半年が経ちますが、松本の冬は寒いです。気温は最高5度ぐらい、最低ではマイナス5度にも届きます。
東京では一度も使ったことがなかった石油ストーブを購入したものの、灯油を消費しすぎないようセラミックヒーターと登山の厚手ウェアを駆使して凌いでいます。冬対策にかかる暖房・服飾費用が引っ越し以降もっとも大きい投資だった気がします。

朝にはスリラー映画ばりの濃い霧が町中を覆うことがあります。霧が晴れた頃に近所にある薄川(ススキ川と読む)を走ると、「里山ってまさにこのことか〜」と感嘆としてしまう美ヶ原の朗らかとした低い山々、そして向かい合うように裾を大きく広げて鎮座している黒と白が混じった壁、もとい冠雪した北アルプスを見下ろすことができ、CGでしか見れないと思っていた絶景を拝むことができます。都会にはないだだっ広い世界を一望できると、時間が止まったように穏やかな感情が訪れ、引っ越してきて本当によかったと感じる日々です。

 

どんなお店にするか

cotan booksは「インターネットとうまくつきあう」ことをコンセプトにした本屋です。

もう少し詳しい説明については、こちらのリンクをご覧ください。

cotanbooks.hatenadiary.jp

大雑把にまとめると、本を通してインターネットのメリット・デメリットを提示しつつ、日頃の付き合い方を顧みて、個々人にとっての枯淡の価値というものを見出すお手伝いをしよう、というものです。

しっくりくる言葉として、デジタル・ウェルビーイングというものがありますが、この範疇にとどまらない本やサービスを提供していきます。副次的に、現代社会に広く普及しほぼインフラ化したインターネット(そしてそれ以外の世界)について学べる・話せる、よろず相談所として機能すれば嬉しいとも思います。

と、ここまで読んでも腹落ちしてない方が多いかと思います。本当は本エントリに「なぜ古本屋なのか?なぜインターネットなのか?」を詳細に書いていくつもりでしたが、自分があまりに遅筆なためその説明は別稿に任せます。

 

何を書いていくか

このブログでは、今のところ不定期更新のつもりですが、開業準備の記録として日記がメインコンテンツになります。本や音楽・映画についてのコラムもたまに。

あまり計画的ではないのは事実ですが、その時々のライブ感を大事にするということでいったんは煙に巻こうと思います。

もちろん読んでくれる方にとって役に立つ情報も届けられたら、とは思いますが、あくまで日記の体裁を取っていくので生活臭が漂う内容になっていくことはご容赦ください。(今更テニスプレイヤーのジョコヴィッチの本を読んで、グルテンを減らした食生活に興味が湧いてます)

cotan booksでは今のところ、twitterinstagramのアカウントは持っていますが、ほぼ稼働していない状況なのでこれからアクティブにしていこうと思います。まずはタイムラインを日々覗くところから。いいねをつけたり、リプ・DMを飛ばしたり徐々に生命力・ネット人間らしさを身につけていくつもりです。

幸運なことに、松本で知り合った人々は掛け値抜きで親切な方ばかりです。もちろん人との関わり方が会社員の時とは違うので、予期しなかったイベントが多くなっていることは事実です。つまり書くネタはきっと切れないはず......がんばるぞ。

長くなりましたが、それではみなさま、本年もよろしくお願いいたします。